JシリーズXC第7戦 瀬女高原

ブリヂストンアンカー 山本幸平、辻浦圭一のワンツーフィニッシュ

2007/10/19 21:33



[画像:ゴール後チーム全員で称え合う]
『ブリヂストンアンカーのワンツーフィニッシュ、ゴール後チーム全員で称え合う。鈴木雷太への最高のプレゼントに。』

10月14日、石川県白山市白山瀬女高原MTBワールド瀬女にて、JシリーズXC第7戦が開催された。エリート男子は山本幸平(チームブリヂストンアンカー)が独走で優勝。また同チームの辻浦圭一も2位入賞でワンツーフィニッシュ。エリート女子は、瀬女が一番好きなコースだという矢沢みつみ(SY-Nak SPECIALIZED)が優勝した。

鈴木雷太、野口忍の引退レース
ブリヂストンアンカーが勝利をプレゼント


青森県大鰐温泉での第6戦が中止となり、今大会がJ1大会の実質的な第6戦目であり、そして最終戦でもある。

また、長らくXCレースシーンを牽引してきた、ブリヂストンアンカーの鈴木雷太、TREKの野口忍、両選手がこの大会で引退となる(鈴木雷太は“卒業”と表現している)。それぞれ10年以上もJシリーズに参戦してきた大ベテランだ。今後も自転車の仕事に携わっていき、ホビーレースにも積極的に参加するとのことだが、詳細は公にされていない。

コースは全長約6km、周回標高は200mと高低差が小さく、ゲレンデエリアを中心に、程長く伸びているレイアウトだ。一部舗装区間はあるが、全般的に荒れていて、平地でもパワーがないときついコースだ。また下りも木の根っこや岩があり難易度が高く、天候は晴れているが、下りの一部は湿っていて滑りやすく、走りのメリハリも大切になるところだ。

[画像:片山梨絵は1周目でパンク]
『片山梨絵が1周目を終えるころには前輪の空気が完全に抜けていた。』

[画像:荒れた下りも安定した走りの矢沢]
『荒れた下りも安定した走りの矢沢。好きなコースというだけあって走りも堅調。』

[画像:左から2位中込由香里、1位矢沢みつみ、3位深井薫]
『(写真左から)2位、中込由香里(SY-Nak SPECIALIZED) 1位、矢沢みつみ(SY-Nak SPECIALIZED) 3位、深井薫(Team BMC)』

エリート女子は、女王片山梨絵が1周目中盤で前輪がパンク。パンク修理剤の注入がうまくいかず、エアがたりないまま2周目に突入。機材交換が認められているテクニカルフィードが用意された全日本選手権と違って、Jシリーズは手持ちの機材で対応しなければいけない。替えチューブを持っていた片山だが、ボンベがないため2周目にはまともに走ることができず、早々にリタイアした。

一方で堅調な走りを見せていた矢沢みつみ(SY-Nak SPECIALIZED)が、スローダウンした片山を1周目にパス。そのまま周回を重ね優勝した。

「体調が良かったから、最後まで片山さんと一緒に走って勝ちたかった。このコースはテクニカルなところがあって、一番好きなコース。ここを好きなコースっていう人はあまりいないみたいだけど。初めて走ったときは前に進めないぐらいで、泣きながら走っていたんですけど。最近は楽しくなってきて、ひたすら踏むだけじゃなくて、下りも上りもほどよくある」と矢沢。

一カ所、チェーンリングがちょうど当たるドロップオフがある。片山がリタイアしたあとには、そこを乗ったまま下っていたのは女子エリートでは矢沢だけだった。リスクリターン比で考えれば、タイムにそれほど影響するわけではないが、テクニカルセクションも安定してこなす実力を備えていた矢沢の勝利だ。ちなみに、このドロップオフ、男子となると乗ったままとバイクを降りるのとではタイム差は大きく、乗ったまま下っていたのは半数以下という印象だ。

「また来年にむけていい感じで負われて良かった。今シーズンはいろんな想いをした一年だった。最初は2位が続いて、優勝できるかなと思ったら、富士見の頃には体重が増えて、表彰台に乗れないときがあって落ち込みました。そこから頑張って最終戦で勝つぞって思ったのは最近ですけど、ここでは勝つつもりでいきました。2週間前まではめちゃくちゃヘコんでました。疲れて走れませんって感じで。草レースの疲労も抜けないこともあって、夏の疲れも出ていたみたい。(ここで同チームの中込辰吾氏。「疲れずに横ばいだったら、横ばいのママ。疲れて沈むからあがっていくんですよ」)。と、このように励まされ頑張ってきました(笑)。来年はバツハツしますんで!」と力強いコメントを残した。

パンクした片山は、どうやらタイヤになにかが刺さっていたようである。下りでのリム打ちではないようで、平地を走っているときに空気が抜け始めたという。

「2周目も走ってみたけど、リムからタイヤが外れたりして、走っていることの意味が無くなってバイクを降りた。調子は良くなかった。調子が良くて集中していたら、すぐにチューブを入れて修理していたと思う。でも泡をいれるだけで直ればいいなって、ラクな方向に気持ちが流れてしまった。最後はバシッと決めて終わりたかったけど、カゼもひいて、無難に終わればいいと思っていたところもあった。そんな気持ちで走れるほど甘くはないということを再認識しました」と片山。

[画像:引退する鈴木雷太と野口忍に花束が贈られた]
『男子スタート前、引退セレモニーでは鈴木雷太(チームブリヂストンアンカー)と野口忍(TREK)に花束が贈られた。』

[画像:全日本チャンプ竹谷を逃がすまいと食らいつく山本幸平]
『スタート直後の上り。全日本チャンプ竹谷を序盤から逃がすまいと食らいつく山本幸平』

[画像:作戦が成功した山本幸平]
『独走で後続を寄せ付けない作戦が成功した山本幸平(チームブリヂストンアンカー)』

[画像:山本幸平がエリートカテゴリーで初優勝]
『山本幸平(チームブリヂストンアンカー)エリートカテゴリーで初優勝。』

[画像:左から2位辻浦圭一、1位山本幸平、3位小野寺健]
『(写真左から)2位、辻浦圭一(チームブリヂストンアンカー) 1位、山本幸平(チームブリヂストンアンカー) 3位、小野寺健(SUBARU GARYFISHER)』

男子はスタート前に鈴木雷太、野口忍の引退セレモニーが催された。こういった演出が大会側で行われたことは過去になく、いかに影響力を持った選手だったかを伺わせる。

1周目からブリヂストンアンカーの山本幸平が独走。周回を重ねるごとに、じわじわとタイム差を広げていく。これに竹谷賢二(SPECIALIZED)、辻浦圭一(ブリヂストンアンカー)、小野寺健(SUBARU GARYFISHER)が続く。

1周目から独走態勢に入った山本幸平はそのまま逃げ切り、チームの監督でもあり、師匠でもある鈴木雷太に優勝をプレゼントした。

この独走は山本幸平の作戦でもあった。
「先週の箱館山でのJ2大会があって、竹谷さんとの一騎打ちになったんですけど、そこで竹谷さんの走りがわかりました。竹谷さんはイーブンペースでずっと走るので、そこでこっちが速いペースで走れば、敵は乳酸が溜まっていくからペースを上げられない。あとは自分のペースで行くだけですね。いままではトップスピードを上げるトレーニングを今年から初めて、やっとそれができるようになった。世界戦やフランスでずっと活動してきて、速い人はごまんといる。今日も1位を走っていても、世界で速いライダーを見据えてずっと走っていました。今日は雷太さんの“卒業”は意識した。やっぱりパワーになりますね。永遠の先生でもあるライタ先生のために走ったレースでもあります。またチームで勝ち取った勝利でもあります。今年はプロ一年目でとても成長できた。フランスに行き、トレーシング方法、MTBとロードの走りの違い。むこうはしっかり区別されている。日本人はそれがまだ分かっていない。自転車のことだけじゃなく、言葉や文化の違いも知った。来シーズンはまだ模索中。シクロクロスはするけど国内でトレーニングとしてする予定。自分はMTBで世界のトップになりたい」と山本幸平。

2位は辻浦と小野寺の一騎打ち。最終回までもつれ込んだが、辻浦の競り勝ち。ブリヂストンアンカーはワンツーフィニッシュを飾った。

「結果は2番ですけど、チームとしてはワンツーで、ライタさんには言葉じゃなく行動でイイプレゼントができたと思います。幸平が一番だったから、追いつく必要もないかなと思って。それよりも確実にレースをコントロールして、幸平を安心して前に出して、こっちは抑えるところを抑えてってかんじですね。もちろん勝ちたかったけど、まあコンディションもそれほど良くなかったから、力を出し切ったと思う。今年は最初のスタートが良くて中盤中だるみのシーズンでしたね。でも最後に表彰台に乗ることができて、ランキングとしても昨年と比べると良い。満足はできないけど、力を出し切ったいいシーズンだったと思う」と2位の辻浦。

3位の小野寺は辻浦の勝負強さに負けたとコメント。

「辻浦さんと追いついたり抜かれたりしている中で竹谷さんを抜いた。辻浦さんは今回のような競り合いに慣れている。僕としては最後抜きたかったけど。今シーズンはなかなかうまくいかず、やっと表彰台に上れた」。

レース中盤まで2位をキープしていた竹谷は5位。1周目からメカトラで思うように走れなかったようだ。

「チェーンがジャムってしまって、だましだまし走っていた。調子は良くなかったけど、しょうがない。弱り目に祟り目みたいなものですね。逆に身体に負担がかからなくてよかった。今日は大事なレースだったから、結果的にはアンカーにとっていいレースになった。もちろん勝てないのは悔しいけど、アンカーのことを考えると気分的にはチャラかな? 今シーズンいろんなことがありました。僕自身にとって転機にもなった。今後も変わらず頑張っていけるかな。今年は一段階パワーアップしたと感じている。来年どこでその力を発揮するかを考えているところ。(オリンピックで出場枠を自力で獲れなかったことは)気にしていない。北京プレ大会では、アジア選では僕らに勝った香港や中国の選手にも大差で勝つことができたので、リベンジはできた。5位という成績も出している。別のものではあるけど、僕自身の中では整理ができている。あとは今後なにをしていくか。スペシャライズドはアメリカのメーカーだけど、なにかできることもありそうかなと、外を見た展開も考えている」。

また引退する選手の一方で復活した選手もいた。第1戦八幡浜大会の試走時にクラッシュして負傷した山口孝徳(TEAM SUBARU/ENDLESSProRide)だ。山口にとっては、今年ようやく1戦目なのである。そのためスタートは最後尾となったが、渋滞するなか追い上げて11位で完走した。

「ビリからのスタートで上りも下りも渋滞して追いつくかどうか分からなかったけど、走り続けているうちに見慣れた顔がパラパラ落ちてきたからイケるかなと思った。ドロップオフとか、ドンって降りるところは何人も落っこちていたからここでムリして転ぶよりも順位を上げたかった。毎周回2、3人はネットに引っかかっていたしね。でも楽しくなってきたね。動けるようになったらね。オフシーズンは草レースを走りながら走り方を整えていきたい。1ヶ月半しか乗り込んでいないけど。振り出しに戻ったからこれからだね。オレは引退というよりは何回でも甦るほうだから」と山口。

表彰式を終えて再び野口忍、鈴木雷太の引退セレモニー。

鈴木雷太のコメント
「本当に皆さんのおかげでこれまでやってこれた。挫折しそうになったとき、5年ぐらいは悩んでいたことが多かった。“鈴木雷太”っていう今あるものは、みんなが作ってくれたものだと思う。感謝の気持ちでいっぱいです。今言えることはありがとう、この言葉に尽きると思う。みんなありがとう」。

野口忍のコメント
「今日はたくさんの応援本当にありがとうございました。もうちょっと走った方がいいかなって思ったぐらい応援してもらった(笑)。今までうれしいこと、悲しいこといろんなことがあったけど、今日はいい最後のレースになったと思う。明日から苦しい練習をしなくて済むかと思うとホッとしているんですけど。もちろん自転車は好きなのでずっと乗り続けていきます。ジャパンシリーズには出ないと思うけど、いろんなイベントには参加してきます。自転車を盛り上げていきたい。ここでは発表できないけど、自転車関係の仕事をしていくので、レース会場で皆さんとお会いすることもあるかと思います。いままでありがとうございました」。

これでJシリーズは、10月28日、修善寺でのJ2大会で全て終わりを告げる。
またアジア選では、女子は北京五輪枠をほぼ確定させたが、男子の五輪出場枠は上位国が辞退する可能性を期待する結果となった。来年までのシーズン、XC選手はシクロクロスなども活躍の舞台となる。シクロクロスに出ない選手も、オフのようでまったくオフじゃない。来シーズンにむけてトレーニングだけじゃなく、スポンサー獲得など、これからまた忙しくなってくる。

XCエリート男子
1 山本幸平 チームブリヂストンアンカー 1:56:11.05
2 辻浦圭一 チームブリヂストンアンカー 1:57:21.87
3 小野寺健 SUBARUGARYFISHER 1:57:23.97
4 山本和弘 キャノンデールディアドラ 2:00:12.49
5 竹谷賢二 チームスペシャライズド 2:01:56.26
6 門田基志 TEAM GIANT 2:04.26.70
7 柴田健太郎 チームスペシャライズド 2:04:52.00
8 江下健太郎 チームMXサルサ 2:05:28.96
9 竹之内悠 TREK  2:08:12.02
10 松本駿 TREK  2:08:40.37

XCエリート女子
1 矢沢みつみ SY-Nak SPECIALIZED 1:44:28.18
2 中込由香里 SY-Nak SPECIALIZED 1:50:12.38
3 深井薫 TeamBMC  1:59:22.38
4 山本佳苗 TeamBMC 2:00:35.77
5 重兼みゆき 焼鳥山鳥R  -2laps
6 光田真基 TEAM KHS/重力技研 -2laps

JシリーズXC第7戦瀬女高原 グラフィックス

Photo&text:Daisuke.SUMISAKI

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